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『新・幕末純情伝 FAKE NEWS』感想

『新・幕末純情 FAKE NEWS』 観劇の感想です!

4月末に『JOKER TRAP』を観て、松村さんの演技をもっと観てみたいと思いチケットを取りました。ですので、十分に時間はあったのですが、まず全く予習せずに行きました。やはり1度知ったことを無かったことには出来ないので、それならばまず、まっさらな状態で観て、そしてそのあとに色々と調べて、もう一度観れば良いかなと考えてのことでしたが、そのためか、1回目と2回目では全く感想が異なるものとなりました。たったの2回、また記憶がぶっ飛んでいたり見当違いな見方をしている所も自覚している以上に多々あるとは思うのですが、せっかくなのでの記録です。

 

紀伊国屋ホール

駅に直結なのが嬉しかったし、本屋とつながっているのも嬉しかったです。つかこうへい作品ということで、今回の舞台からその名前をはじめて知ったような私からすると、どのような方なのだろうかと思った時、すぐに関する書籍などを探せるのが素敵だなと思いました。

劇場は、とても雰囲気があり、気分が上がりました笑 劇場については事前に調べて来たので、椅子が固めなのでクッションを、という情報を知ってはいたのですが、クッションとなる脂肪なんて無いような愛らしい華奢な女の子が使うべきなのではないか、自分が使ったら後ろ指さされるのではないかと謎の自意識に悩まされ、使いませんでした。1回目それで全く問題無かったので2回目も同様にクッション無しで座ったところ、信じられないくらいに腰が痛くなりましたので、断言しますが、あのクッションは全人類必須です。

 

◎脚本・演出

と分けてみたけれど、単に全体の感想です。

1回目は、脚本も演出も、全然合わない、と落ち込みました。台詞を早口で詰め込むのに驚きましたが、だんだん心地よくなってきて、それは好きだったのですが、なぜそうなるのか、ということが全く分からず、難しい…! と思いました。ことごとく男臭いノリ、と思ってしまって、ことごとく全員が総司を自分のものにする、自分のために使うことしか考えていないようにみえて、かといって総司に感情移入出来るわけでもなくて…。歌詞入りの歌を殺陣に合わせて流し、台詞をいう時にぐっと音を下げてまたあげてというのもただでさえ台詞が早いのに…と思ってしまいました。などと自分の力量不足を相手のせいにしながらも、後半、もうぼろぼろに泣かされました! 幕が降りたあと、ただ座っていただけなのにぐったりと疲れきってしまうくらい、舞台上からのエネルギーは凄まじく、脳内に焼き付けられ、目を閉じると舞台が思い出されて、その日は全く眠れませんでした。

それで正直、もういいかな、と思ったのですが、Twitterやブログなどでの感想をみると様々な感想があり、その中に、つかこうへい作品は初めてだとなかなか難しい、けれども2回目3回目と重ねると見方が変わってくる…というのを見つけまして、それを信じることにしました。そこで『幕末純情伝』の脚本を読んだり、つかこうへい作品について調べたり、過去の作品の感想を漁ったり、今回の舞台についての感想を様々拝見させていただいたりしているうちに不思議なものでだんだんと楽しみになってきて、そして迎えた2回目、信じられないくらいに、めちゃくちゃに、面白かったです…!!!

完全にこちら側の受け取り方の問題なんですけれども…、わかりやすいように変えられていることがようやくわかったり、ひとりひとりに対する認識が変わったり、また音響はやっぱり個人的な好みではないけれども、がっと上がる音量にのせてこちら側もがっと盛り上がるし、に対しての最後、全くの無音に、役者さんの演技だけでみせきって幕を下ろすのもまた、ひたすらにさすが…と思ったりして、ただもうおそろしくよかったです。

どうしたってエネルギーが爆発せざるを得ない作品じゃないかと思ったのが1回目で、それは凄まじい量の台詞だったり殺陣だったり、そのリズムというかノリのせいで、だからそれを評価するのはなんだか、と、焼き付いて離れない舞台を思いながら夜中、あまりの寝付けなさにイライラしていたのですが、2回目、単純に普通はそれをこなせないし、下手したら完全なる自己満足として、舞台に立つ自分たちだけが気持ち良く終わってしまう危険性、というのを何となく感じて、何様かというはなしですけれども、あらためてその凄さにひれ伏す思いでした。

 

◎個々人への感想

沖田総司/北原里英

この感情はもうふつうに恋、という感じです。まさしくまっことらぶというか、思い出すだけで泣けてしまいます。

北原里英さん、しぬほど可愛いのは存じ上げておりましたが、そんな北原さん演じる沖田総司! 周りの方々が大きいので、対照的に本当にちいさくみえるのですが、そのちいさなお顔に、チワワみたいな…本当に例えがひどいんですけれども…うるうるとしたおおきな目、それをさらにみひらいて、つねにつねに、必死に訴えかける目をしていて、それをみたらもう、わけがわからずとも抱きしめてしまいたくなるし、皆が総司にどうしようもなく惹かれてしまう理由が分かりました。

一人称が、私、僕、俺と変わり、それに合わせて人格も変わるようで、僕の時の総司がひたすらに可愛いんですけれども、本当の総司は、一体どこにいるのかなと思わされます。桂に、男なしでは1日も生きられない(ニュアンス)的なことを言われて、後にそれを自分の言葉として繰り返すのがとても悲しくて、総司はそんなふうに、周りからの言葉で自分を定めてきたわけですよね。自分の体の病気のせいで人々から疎まれるのに、自分の女性としての体は人々から求められて、なのに男として刀を持たされて男として生きるように言われて、人に受け入れられるために、求められるために、押し付けられるものを必死で受け止め与えていく姿は本当にかなしくて、だからこそ最後の菊姫の姿にはもう大号泣してしまいます。決して弱い訳ではなく、自我が無い訳ではないけれども、根っこにあるのは、否定されることへの恐れで、愛されたいというつよい願いがあるわけで。全員との幸せな最後をみたかったけれど、特に、勝海舟との兄と妹としておくる幸せな日々をみたかったです!!!!! 演技とか何だとかじゃなくて単純にもう総司そして演じる北原さんが大好き〜〜〜〜〜〜〜〜〜好き……。

 

坂本龍馬/味方良介

龍馬が出ればもれなく似蔵が出るし総司も登場しちゃうのであまり多くは注目できなかったのですが、汗がすごかったです。皆様だくだくだったけれども、特に。

龍馬がいちばん、よく分からない人でした。会話が噛み合わず、目が見えない上に耳が聞こえない(大号泣ポイント)と思ったらふつうに会話し出した…ということではなくて、決して自分を明かさない…というかんじ。最後の、龍馬は何度でも蘇る…みたいなシーン、初見はまた生き返った…! と思ってしまったのですが、必死で力をかき集めて総司のために立ち上がったんだと2回目にしてようやくわかりました。読解力の無さがやばいんですけれども、最後にすこしだけ弱音を吐くもすぐに飲み込んでしまうところとか、オタクなのですぐに泣きましたし、総司は土方と桂とそれぞれほんとうに触れそうなくらいぎりぎりまで唇を近づけるけれども、2人ともすんでのところでそれを拒否してしまうのに対しての龍馬とのシーンにまた泣きました。

演じる味方良介さん、滑舌がおそろしくて、まるで当たり前のように流れるように、よく通る声で莫大な台詞を話されるのに驚かされました。本当にすごかったです。日替わりネタで、素になって笑った姿になんだかほっとさせられました。ツッコミ面白いです。二宮役の増子さんへ、未来があるというのが最高でした。

 

土方歳三/小松準弥

歴史をよく知らないので、土方ときいて個人的に想起するのは薄桜鬼の土方で、どちらもフィクションなんですけれども、あまりに違うのでびっくりしました。1回目は、総司をビンタする姿に何だこのクズ男…と怒りを覚えたのですが、2回目は、席もあって、総司へ向けるまなざしがよく見えたのですが、それがあんまりにも優しくて、なんだかもうひたすらに悲しくなりました。土方もまた時代に翻弄された1人なんですね。キスできるわけがないとか何とか、それも裏表があったとかじゃないのかなって思って、どうしてもできなかった、そのどうしてもという弱さは、彼の劣等感とも繋がるのかなというかんじがして、もう全員に思うんですけれども、かなしい。

 

桂小五郎/田中涼

個人的にいちばん印象が変わった役です。

演じる田中涼星さんが本当に細くて、足が長くて、1回目観た時は勝手に喉が辛そうに聞こえてしまったのですが、2回目は全然そんなこと無く、莫大な台詞をものすごい勢いで発していました。

お前ら好きだよ(ニュアンス…)の言い方が好きでした。あと、二宮に刀を向けられた時の表情と、総司が斬ったことに絶望して、腹をきろうとするところ。いや、まじか腹を…きっちゃう……? と正直思っていたのですが、2回目はあまりの演技に圧倒されて、これは腹切る…と謎の納得を、というか、簡単に書いてしまうけれども、そのようなことをしようとしてしまうのは当たり前の状態ではできなくて、なのでありえないくらいに、恐ろしいくらいに追い詰められる姿がもう本当にぐしゃぐしゃで、見ていてこわくなりました。あの瞬間は一人残らず、全員が桂をみるシーンだと思うんですけれども、それをじっくりみせきってくださって、何だかもう本当に…すごいです。

かわって日替わりのシーン、とっても面白かったです。日替わりのシーンは、レポなどを読んでも何が何なのか分からないですけれども、その場にいるととにかく訳が分からなくてそれが楽しい。

ある意味で弱くて、けれども弱いからこそしたたかに強く生きていけるのが桂なのだなあと思いました。

 

・二宮/増子敦貴

今までに増してさらにひどい感想ですけれども、単純にもう可愛らしかった。すごく気持ち悪いことをいうと、肌がお風呂上がりの赤ちゃんみたいにとぅるんとぅるんでまっしろで加工アプリ…じゃない現実…と驚きました。あれは若さゆえなのか何なのか…恐ろしい。2回しかみれていない日替わりですが、自由度がかなり高まっていて、楽しかったです。

役に対しては、分かる! と勝手に共感していました。総司へ、どこかでか弱い理想を抱いてしまう感じ。愛らしい二宮の造形が、桂に対峙した瞬間にがっと憎しみ全開に変わるギャップが凄かったです。

 

・岡田似蔵/松村龍之介

全世界に感謝しました。

松村さんが岡田似蔵を演じる世界に感謝です。

作中、悪い人とか良い人だとかのように、単純に割り切れない人ばかりですが、似蔵は一見、唯一の良心にみえて、けれども単純に良い人という訳では無いのが魅力的でした。

また、後ろの席から観ても前の席から観ても、似蔵はどちらも楽しかったのも良かったです。後ろの席だと、似蔵の、龍馬を慕う影のような、舞台ならではの独特の動き、重力を感じさせない人間離れした動きがよくみえて、恐ろしい殺陣が美しくみえて、最高でした。桂の刀を蹴りあげるのも、いきなりぴたりと止まって相手の動きを静かに止めるのも、後ろの席からだとよく見えます。前からだと、細かい表情の演技がみえて、じっと動かない時の目線の演技から、台詞を発するまでの震え、したたりおちる汗まで見えます。舞台をがっと掴むのも見えます。ぴたりと止まる事のできるほどの筋肉、静に対しての動の筋肉、その凄まじさもよく分かります。どちらもどちらでものすごく良くて、本当に最高でした。

また、松村さんのダンスがとても好きなので、ちょっとでもみれて嬉しすぎて泣きましたし殺陣が1番美しくて泣きましたし言葉遣いがしっくりきすぎて泣きました。

似蔵の、総司への想いは、一体何なんだろうといまだ良く分からずにいます。総司を守ろうとして兄は殺され、自身も怪我を負ったのに、逆恨みもせず、他の人のように女性として体を求めることもない。けれども師と崇める龍馬が総司へ想いをむけていると知れば何とか成就させようと奔走する。それは、総司の思いを本当に大切な意味ではそうではないけれども、ある意味では無視することになるとも思えます。龍馬に対して、絶対的に信じ仕えたり(間違ってると思ったことは、大好きだけれどもと前置きして止めにかかるけれども)彼の中の女性像がものすごく綺麗なものであることを踏まえると、似蔵は本当に愛の人だけれども、その愛はどこか愚純な優しさだなあと思いました。もちろん総司を幼い頃から知っているからこそ兄のような気持ちで抱く愛情や、疎まれる姿に自分を重ねて感じる憐憫、女の子なのに人を斬るための刀を持たされることへの怒りなど、色々なものが混じっているとは思うのですが、あそこまで信じ続けられるのは、どこか、出生や病気もあり、自分は自分である限り幸せになれないんだと自分を除外しているようにもみえて、そんなことなく似蔵にはとにかく幸せになってほしかったです。似蔵にとっての幸せが、向けられた刀を素手で握って自分に刺して、その体で銃を受け止め、暗闇に倒れることなんて思いたくないですけれども、その姿は総司を守るために命を落とした兄とも重なって、とりあえず死ぬほど泣けます。みんな泣けるけどめっちゃ泣けます。

 

勝海舟/細貝圭

全員に思いましたが特におそろしくすごい役者さんだと思いました。

発声だけでなく生まれつきの声質もあるのかなと思うのですが、1回目は声のばらつきが気になって、細貝さんめっちゃよく通る…と思っていたところ、2回目は前の席だったこともあり、皆様のお声がビリビリと響き、特に土方などは役柄もあり常に100パーセントの発声、みたいな感じでした。対して、味方さんもなのですが、はじめ細貝さんは80パーセントくらい、もちろんよく通りますが、それくらいの圧に感じたのですが、その後の本気の圧はもう恐ろしくやばかったです。また、YouTubeに上がっている動画にもありますが、言い回しが独特な所があり、その言い方がもうたまらないくらいに大好きでした。他の演技をぜひ観てみたいような、勝海舟の演技があまりに好きすぎたので観るのが怖いような、そんな気持ちですが、機会があればぜひ観たいと思いました。

 

◎お見送り会

初めての体験だったのでの記録ですけれども私自身の自意識をなめていたという虚無の記録です。こんなにもひどい人間もいるのだという励ましになれればと思い友人に話したらあまりにひどすぎて普通に引かれました。

2回目の日がお見送りありの日で、その中には松村さんと細貝さんがいらっしゃいまして、近くで拝見できるなんて嬉しいと楽しみにしていましたが、お見送りの列に並んでいると、役者さんが階段の下に並んでいるのが見えまして、その瞬間、こちらが見れるということはあちらからも見れるのだという当たり前のことに気づきまして、無理だと思ったんですけれども、驚く程に遅いですね。

そして階段を降りながら、このまま俯いたまま通り過ぎてしまえることに気づいてそうしかけたのですが、いやでも、と勇気をだして見上げたら松村さんが立っていらっしゃり、その瞬間に思ったのは、美しいとかかっこいいとかそんなことではなくて、今すぐこの世から消え去りたいということでした。一刻も早く消え去りたいと早足で床を見ながら通り抜けて劇場を出て駅のホームでようやく、他の方々のお顔を拝見していないことに気づき、虚無感に襲われました。虚無です。私は何百万人と流れていくうちの1人とはいえ、役者さんが舞台を終えて何もかも出し切った体に鞭打って立っていてくださるのに、お辞儀ひとつもせず俯いて通り過ぎていくなどとは、あまりにもひどすぎるし、それならば参加せずに帰ってわずか数秒でも省略すれば良かったのです。虚無。

 

舞台は、観にいって本当に良かったです…! 皆様が命を捧げて舞台が出来ているのだと心から思いました。熱に当てられて、浮かされて、やはりあれから眠れない日々を過ごしてはいるのですが、それくらい本当に、本当に良かったです。関わるすべての方々に感謝です! まだまだ舞台は続いているので、あの暑さに負けずに、何よりお体に気をつけて、無事に千秋楽を迎えられますよう祈っています!