これやこの

ミーハー

特別な誰かではないけれど

この前、俳優さんへのインタビューの記事を読みました。作品に全く関係の無い、好きなファッションはという質問に、その方はシンプルな服が好きと答えていました。また、自分が着るものだけじゃなく、女性に対しても、女の子らしいふりふりの服ではなくて、シンプルなのが好きですとありました。

 

いにしえより、主にアイドルをはじめとして、人前に立つ職業の方々へ、言葉を変えて何度も何度も繰り返されてきた質問。答える側も、質問する側も、それを読む側も、もう飽き飽きしている(方もいらっしゃるかもしれない)ように思うのですが、何度も何度も繰り返されていくのは、その答えを知りたいと思う人(が、たくさんいると思う人)が実際にいるからで、じゃあ私はというと、両方の気持ち、どちらもあります。

 

以前、あるアーティストの方がとてもとても好きで、その時は、女の子のどんな服が好きなのかを知りたくて知りたくてたまりませんでした。

ですが、そのような質問をされているのを見たことも読んだことも無かったし、その方が自らそのようなことを話すような機会も特に無かったです。代わりに、その方自身が着るものとして、どのような服が好きなのかはその身をもって、また時には明確な言葉をもって発信されていました。具体的には、ある特定のブランドでいつも全身をかためていて、それはもちろん、私などでは到底買えないようなハイブランドです。

ファッションに疎すぎるので、どういうことなのかと理解できないことがたくさんありました。けれども結局は、その方が着ているもの全て、その方が着ているからという理由でかっこいいと思うことに落ち着きました。

そしてそんなふうによく分かっていないのに、勝手に想像して、こういうことなのではないかという桁違いの服を買って、似てる!(似てない)桁違いのイヤリングを買って、ブラウンのアイライナーを漆黒のブラックにして、びっくりするような色のリップを買って、髪を染めました。

その方の黒髪へのこだわりは後々知ることになり、そんな明らかなことさえ間違えていた、すなわち、もう全てが見当違いでしたという、まじわろたな話なのですが、私にとってはもうひとつ、なんだか、無性に楽しかったなあと思う話でもあるのでした。

左手の薬指の指輪に言及する前に、すれ違うことすらない赤の他人という真理の前に、まず、絶対に視界に入ることがない席という揺るぎない、事実があります。

けれども、その席に座るために、その方はどのような女の子の服が好きなのだろうかと悩みに悩んで、勝手に決めつけて、新しく買った桁違い(に安い服)にチークをなしにしてお化けみたいなメイクをしていくのがめちゃくちゃに楽しかったのでした。

 

どんなに可愛い服を手にしてテンションがあがっても、鏡に映る自分を見る度にすぐに落ち込んでしまうから、なるべく無難な服、無難なメイクを求めていました。服に見合うだけの努力をすることからも逃げていました。

でもそれってやっぱり、と思います。全然楽しくないです。

完全な自己満足で終わったけれども、わくわくして服を選んで、どきどきしてメイクをして、足をひねりながらもびっくりするような厚底靴を履くのは(ライブではもちろんだめですので普通の日に履いて、そして盛大に足首やりました👋)、とってもとてもとてもとてもとても楽しくて、その楽しさに出会えたこと、そのきっかけをもらったこと、今も勝手に感謝しています。

 

月日はたち、ミーハーの私はその方自身への熱烈な気持ちは薄れていってしまいました。いまもその方の作品は好きですが、服を選ぶ時にその方を思い浮かべることは無いし、ブリーチした髪は切ってしまったし、柔らかいブラウンのアイライナーでさえひかないこともあるし、その一方でピンクのチークは毎日愛用しています。

 

先日、友人に誘われて舞台を観にいったとき、いつも可愛い友人がさらに可愛らしくしているのを、また、近くに座る女の子達がふりふりのとても可愛らしい洋服を着ているのをみて、なんだかきゅんとして、そして、ふわふわとした気持ちになりました。

着飾る理由なんて様々で、舞台を観に行く理由だって様々ありますけれども、特別な人の特別な日に、特別な格好をするというのは、やはりなんだか、とてつもなく素敵です。

 

私はたぶん、好きな人がシンプルな服が好きだからといって、私もシンプルな服を着ようという、そんな気持ちには悲しいことになれない(シンプルな服はその人の素材が良いからこそ映えるものですね)のですが、でもそれを読んで、そういうことを思って服を選ぶ方がいらっしゃったら、なんだかいいなあと思います。

特別な誰かの特別な日を、特別に可愛くて素敵な自分をもって迎えるということ、何よりもそれは、とてもとてもとてもとても素敵で可愛くて最高すぎることです。

たとえば、普段ふりふりの服を着ている方が、特別な人の晴れ舞台に、その中で特別に選んだふりふりの服を着ているのも、シンプルな服が好きというからその好みに合わせて普段は着ないような服を選ぶのも、その人の印象をファンの姿を持ってさらにも良くしようと万人受けするような格好を試みるのも。きっと他にも全て。

 

私は「特別な誰か」ではない、ただのミーハーなので。ただ、友人があまりに可愛かったので。「特別な誰か」ではないけれど、すごく可愛いって思っておりました、という雑記でした。